技術のプロフェッショナルのエンジニアといえども、やはり仕事ではコミュニケーション能力が求められます。
具体的に言えば、クライアントのシステム開発とそのメンテナンスを請負う場合には、「クライアントの要望や、抱えている問題点を的確に捉え、それに対して、適切なシステム開発や改善をする論理的な対応能力」が必要とされます。また、自らアイデアを出して、クライアントにソリューションを提案する力も必要です。
つまり、エンジニアに必要とされるコミュニケーション能力とは、相手の要望を理解し、適切な対応をする、という社会人に共通して必要とされる能力がベースになっているのです。
そこで、「社会人基礎力」という基礎能力カテゴライズを参考にしながら、エンジニアに求められるコミュニケーション能力を考えてみたいと思います。
「社会人基礎力」とは?
「社会人基礎力」とは、経済産業省が提唱している、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のことです。具体的には、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力と、各能力を構成する合計12の能力要素から成り立ちます。
社会人基礎力とは
IT系エンジニアに求められる基礎力or足りない基礎力とは?
経済産業省が企業の人事部に対して、その職場で求められる「社会人基礎力」についてアンケート調査を行った結果、IT系職種に関して次のような報告があります。
● 3つの能力については、他の職種に比べて「考え抜く力」が高く求められている。一方で不足が見られるのは、「前に踏み出す力」と「チームで働く力」であり、不足の度合いは他職種の平均を上回っている。
● 12の能力要素については、課題発見力、想像力、状況把握力が他の職種よりも高く求められている。また、状況把握力、ストレスコントロール力については、他の職種よりも目立って不足が見られる。
また、社会人基礎力については、現役大学生が17の企業などの人事担当者にインタビューを行った際の様子が、経済産業省の資料「企業の人事のプロに聞く「社会人基礎力」インタビュー」にまとめられています。
このインタビュー中で、エンジニアのコミュニケーション能力に関して、ある大手情報通信企業の人事担当者が次のように述べています。
● システム開発プロジェクトでは、自社以外の様々な企業の人と一緒に、チームでシステムを作り、1年間ほどの時間をかけることも多い。
● プロジェクト開始段階では、クライアントが具体的なビジョンを持っていない場合もある。そのため、コミュニケーションを通して、クライアントが本当に望んでいることを うまく引き出していく能力が必要である。
● あるプロジェクトで、各メンバーが役割を分担し、各自がそのスキルを向上できる仕組みをつくったが、反発があった。しかし、メンバー間で丁寧にコミュニケーションを取るうちに、その仕組みが浸透しプロジェクトがうまくいった。このように、社会人の仕事には「正解」「不正解」はないので、どうやって解決策を見いだしていくか、工夫のしがいがある。
IT系エンジニアに必要な力
このような調査結果やインタビューから、チームで働くことが多く、積極的に解決策を見出していくことが仕事上求められるIT系エンジニアは、不足している「チームで働く力」や「前に踏み出す力」を満たすように、「社会人基礎力」を身に付ける必要があるといえるでしょう。
なお、「企業の人事のプロに聞く「社会人基礎力」インタビュー」は、IT系に限らず、就職活動を控えた方や社会人歴の浅い方には非常に参考になるのではないでしょうか。